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MUSIC LAND -私の庭の花たち-

MUSIC LAND -私の庭の花たち-

「見果てぬ夢」NO.2(3.4.5)




ここをクリックすると曲が聴けます。

作詩作曲した「人間」という曲です。



「見果てぬ夢」3

 待望の日曜日。

彼と待ち合わせして、

うちに行く前にちょっとデート?

「あなたが例の転校生だってことは、内緒なの。

パパは私の好きな人よりも、

その転校生に会いたいって言ったのよ。

失礼しちゃうと思わない?

娘の恋人に会いたくないなんてね。

だから罰として驚かせてやるの。

あなたも黙っていてね。

約束よ。指切りげんまん。」

無理やり小指をからませて、

指切りをしてしまった。触れちゃった。

彼は怪訝そうな顔をして、

慌てて手を振り払った。

「どういうことだ? 

僕が君の恋人だなんて。冗談じゃないよ。」

「冗談なんか言わないわ。

まあ、今は違うけど、未来の恋人よ。」

「君も相当な自信家だね。

いつ僕が君の恋人になると言った?」

「今にならせてみせるわ。

私は自信家ではなく、努力家よ。」

「そうか。それなら、僕も受けて立とう。

僕は決して君の恋人にはならないよ。

誰も愛さないし、愛されたくもないんだ。」

「『ならぬなら、ならせてみせよう、恋人に』

これ分かる?」

「『鳴かぬなら、鳴かせてみせよう、ホトトギス』

のパロディだろ。」

「そう、よく分かったわね。

歴史は習っていないはずなのに。」

「馬鹿にするな。だが僕の町しか、

歴史の研究は許されていない。

君こそ、なんでそんなことを知ってるんだ?」

「パパに教わったのよ。

昔の武将が詠んだ歌だって聞いたけど。」

「君のパパは怖ろしい人だな。科学者といえど、

そんなこと知ってる訳がない。歴史は国家の機密だ。

あの町でしか知りようがないはずなのに。」

「そう言えば、あなたのいた町は、

なんという町なの?

機密のある町だとかパパも言ってたわ。

それなのにあなたはなぜ出てこれたの。」

「僕は奴らのモルモットさ。

ロボットにどこまで出来るか、能力を

試されている。


だからこそ、僕は負けるわけには

いかないのさ。君にもね。」

「それで何もかも一番になろうとしているのね。

スポーツはかなわなくても、勉強では負けないわ。

私だってパパの子ですもの。

科学者になりたいと思ってるのよ。」

「ふん、科学者ね。君のパパの時代には、

人間が科学者になれても、

君の時代には、ロボットが頭脳労働の全てを

牛耳ることになるだろう。

もちろん、僕もその一人になってるだろうがね。」

「あなたも負けず、自信家というか、努力みたいね。

あなたのようなライバルが現れて

私も遣り甲斐があるわ。

今まで、私のような人間が首席を取れたくらい、

この学校にはろくな人間も、

ロボットさえもいなかったのよ。」

「能無しの人間と、顔色をうかがうロボットか。

それじゃ人間以下だな。」

「あまり馬鹿にしたものじゃないわよ。

人間だってやれば出来る

というところを見せてあげるわ。

そうそう、パパに会わせる約束だったわね。」

「自慢のパパとやらを紹介してもらおうか。

人間の科学者さんに。」

「言葉遣いにだけは気をつけてね。

パパは結構うるさいのよ。」

「君の言葉遣いだって、

誉められたものじゃないけどね。」

「だからいつも怒られているのよ。

レディじゃないって。」

「そうだろうな。

とてもレディとは思えない勇ましさだ。」

「冗談言ってる場合じゃないわ。

約束の時間に遅れちゃう。

パパは約束守らない子は嫌いだって、

言うんですもの。」

「君は本当にファザコンだな。

パパのことしか言えないのか。」

「もう、パパついての予備知識を教えてあげてるのよ。

結構、気難しいところがあるから。

根は優しい人なんだけど、

とっつきが悪いのよ。

まあ、あなたと似たようなものかしら。」

「僕と一緒にしないでくれ。

優しくなんかないぞ、僕は。」

「そんなことないわ。

本当はきっと優しい人よ。私信じてるもの。」

「勝手にそう思ってるがいいさ。

期待を裏切っても悪く思うなよ。」

「そういうところが優しいっていうのよ。

いたわってくれてるじゃない。」

「僕はさんざん人間に裏切られてきたから、

信用しないんだ。

君もせいぜい裏切られて学ぶがいいさ。

口で言っても分からないからな。」

「私は人を信じるわ。信じたいのよ。

人間もロボットもみんな人だわ。」

「君は甘いな。

人を信じて裏切られたことはないのか?」

「あるわ。でも、

その人にはその人なりの訳があったのよ。

裏切りたくて裏切った訳じゃないわ。

その人の立場になれば、仕方ないのよ。」

「そんなことを言っていたら、

自分の立場を守れなくなるぞ。

君は人間だ。ロボットじゃない。

いくらロボットの立場に立とうとしても、

出来るもんじゃない。

僕達の苦しみが人間に分かってたまるか。」

「分からないわ。だからこそ理解したいと

思っているの。駄目かしら。」

「余計なお節介はやめてくれ。

どうせ、分かりもしないくせに。

人間なら人間らしく、自分の立場だけを

守っていればいいんだ。」

「それだから、人間はロボットに

恨まれているんでしょう。

どうしたらいいというの。

私はどうすればあなたに近づけるの。教えて。」

「何もしないのが一番さ。

ロボットに軽蔑も同情もしないこと。

ただ放って置いてくれれば、

それでいいんだ。構わないでくれ。」

「それじゃ、いつまでもたっても

人間とロボットは平行線のままよ。」

「それでいいんだ。根本的に違うのだから、

同じ立場には立てない。」

「同じになろうとは思ってないわ。

ただ、少しでも歩み寄りたいの。」

「そんなことより、約束の時間に

間に合わないんじゃないのか?」

「あ、ホントだ。急がなくっちゃ。

走るわよ。ついてきて。」

「これだから人間は嫌なんだ。

君こそ遅れるな。」

ローリーはベスを追い抜かした。

ベスの家へ向かって走る。

「待ってよ。家が分かるの?」

「調査済みさ。君の家くらいすぐに分かる。」

やっと追いついた時は、既にベスの家の前だった。

ベスは息が乱れたら、

ローリーは顔色ひとつ変えずに玄関の前に立ち、

ベスを待っていた。

「ハァハァ、ちょっと待って。

少し落ち着くまで。」

「自分の家なんだから、中で休めよ。

早く呼んでくれ。」

「分かったわよ。もう意地悪なんだから。」


ここをクリックすると、動画と詩が見られます。




「雪の二人」
をクリックすると、作詞作曲した曲が聞けます。

花畑ライン

小説「見果てぬ夢」4

ベルを押すと、父ジョンが待ち構えていたように、

飛び出してきた。

「遅かったじゃないか。何してたんだ。

まあ、早く上がりなさい。」

そそくさとリビングに通すと、

ソファに自分だけ腰掛けてしまった。

ローリーは、どうしていいか分からず、

振り返ってベスを見る。

「もうパパったら。お客さんを立たせたまま、

自分はさっさと座って。」

「やあ済まない。ついいつもの癖が出てしまってね。

さあどうぞ。」

と、座るように勧める。ローリーは落ち着いて、

立ったまま挨拶をした。

「ローリーと申します。お忙しいところを僕の為に

時間を割いていただいて、ありがとうございます。

それなのに、約束の時間に遅れてしまい、

申し訳ありませんでした。」

「いや堅苦しい挨拶は抜きにして、

まあ座ってくれたまえ。」

「パパはあんなこと言ってるけど、

『ちゃんと挨拶も出来ないような奴は駄目だ。』

と、いつも言ってるの。

ローリーが気に入られた証拠よ。」

「こら、もうばらすのか? 

まあともかく私も第一印象は気に入った。

だが、問題はこれからだぞ。

覚悟して答えるように。まず君は娘のどこが

気に入ったのかね。

このじゃじゃ馬娘のはねっかえりを。」

「その勇ましいところです。

勇気と正義感を持った人だと思います。」

「フーム。まあ人間としてはともかく、

女性としては魅力ないだろう。」

「いいえ、心根は優しい女性だと思っています。

同情心あふれるほど。」

「もう、嫌味を言ってるの? 

そらぞらしいお世辞ばかり言わないで」

と、ベスが割り込んで入った。

「これは本当のことだろ。

それを言うなら、皮肉と言ってもらいたいな。」

「まあまあ、痴話喧嘩はやめてくれ。

ベス、お前は黙っていなさい。

私が彼と話しているのだから、

口出しはしないでもらいたいな。

さて、それでは君のご両親は、

何をしていらっしゃるのかね。」

「父は死にました。母は元々いません。

僕には父しかいないのです。」

「いろいろ事情がありそうだね。

済まない事を聞いた。許してくれ。」

「いいえ、別に聞かれて困る事でも

恥ずかしい事でもありません。

僕は父を尊敬していますから、

母なんていなくても構わないのです。」

「君のお父さんはさぞ立派な方だったんだろうね。

君を見れば分かる。

「そうですね。父も科学者でした。

国家の機密に携わる研究をしていて死んだのです。

殉職したと言った方が、通りはいいかもしれませんが。」

「そうだったのか。

それで君は将来何になろうとしてるのかね。」

「科学者です。父に負けないような

研究をしたいと思っています。」

「お父さんは何の研究をしていたのかね。

良かったた、教えて欲しい。」

「残留放射能の研究です。

ドームの外にどれだけ残っているか。」

「何だって。私と同じ研究だ。

お父さんの名前は何というのかね。」

「ギルバートです。ご存知なんですか。」

「知ってるどころではない。

彼は私の友達だった。ロボットでは唯一の。

君ももしかしてロボットなのか? 

彼の息子ということは。」

「そうです。僕はロボットです。

父に作られた実験ロボットです。」

「そうだったのか。

君が、あの転校生のロボットだったんだな。

ギルバートが個人的に作っていたロボットが、

君だったとは。」

「僕を知ってるんですか? 

父が僕を作っていたのを。」

「ああ、彼は自分の子どもを

作るんだと張り切っていた。

大量生産され、コンピューターに

操られるロボットではなく、

自分の意志と感情のみで動く、

人間のようなロボットを作るのだと。

だが、完成間近に彼は亡くなったはず。」

「僕は研究所の実験ロボットとして、

その後完成されたのです。

父の意思に反して、

コンピューターにつながれていますが。」

「それで並のロボットより、優秀だというわけか。

君自身は素晴らしい。大変優秀なロボットだ。

しかし、残念なことだが、娘とは

これ以上深く付き合わないで欲しい。

友達として、またライバルとしてなら、

喜んで君を受け入れよう。

だが、恋人となると話は別だ。

愛し合えば、結婚や子どもを望むだろう。

それが無理なことは君も分かってくれると思う。

ギルバートの息子の君なら。

「分かりました。やはり、あなたも

ただの人間だったと言う訳ですね。

僕は、お嬢さんを愛してはいない。

だが、ロボットを恋人として認められないと

いうのは承服しかねます。

現実問題として、今は無理だとしても、

将来きっとロボットが人間と同等、

いやそれ以上になる時が来るでしょう。

その時は覚悟しておいて下さい。

人間の科学者など要らなくなりますよ。」

「ああ、覚悟している。今でさえ、

ロボットと対抗して、研究するのは大変だ。

だが、娘だけにはせめて夢を叶えさせてやりたい。

科学者になる夢を。」

「そうなればいいですけどね。

まあせいぜい頑張ってください。

僕はこれで失礼します。

もうお嬢さんとはお付き合いしませんので、ご安心を。」

ローリーは慇懃に礼をして、ドアを閉めた。

ベスは後を追った。

「待って、ローリー。」

「ベス、止めても無駄だ。」

ジョンがベスの腕をつかんだ。

「放して、パパ。行かせて。」

「どうしようもないんだ。これだけは。」

「イヤ! ローリーが行っちゃう!」

ベスは泣きながら叫んだが、ローリーの耳には届かない。

虚しく空に響くだけだった。






をクリックしてください。

yosiさんの詩「驟雨」に付けさせていただいた曲が聴けます。

☆ライン

小説「見果てぬ夢」5

二階に駆け上がり、自分の部屋に閉じこもると、

ベットで散々泣いた。

泣きはらした目で、下に降りてきて、

ジョンに噛みついた。

「なんでロボットじゃいけないの。

好きになっちゃ駄目なの?」

「ロボットを好きになるだけならいいが、

やがて結婚し子どもも欲しくなるだろう。

その時はどうするんだ。

ロボットと結婚しても子どもは出来ない。」

「作ればいいんでしょう。

ギルバートのようにロボットの子どもを作るわ。」

「それではお前の子どもにはならないよ。

ただのロボットだ。」

「じゃあ、どうすれば私の子どもになるというの。」

「お前の遺伝子でも入ってない限り、

子どもとしては認められないな。」

「ロボットに遺伝子を組み込めば文句ないのね。

やってやるわよ。」

「そんなことが出来るくらいなら、苦労はしない。

ロボットにはプログラムしか組み込めないのだ。

それくらいお前にだって分かっているはずだろ。」

「分かっているわよ。

だけどそうしなくっちゃ子どもとして

認めないというんだったら、作ってやるわ。

純粋なロボットじゃ無理かもしれないけど、

もっと人間に近い人造人間だったら、

可能かもしれないじゃない。

私、これを研究するわ。決めた。

研究テーマが決まって、嬉しい。」

「勝手にしなさい。研究するのはいいが、

どうするつもりかね。」

「もちろん今はまだそんなこと出来ないわ。

もっと勉強して、基礎知識を身につけてからよ。

科学研究所に勤められたら、研究できるでしょ。」

「科学研究所はそんなに甘いところではない。

上から与えられたテーマをこなしていくのが精一杯だ。

個人的な研究なんかしている暇はない。」

「人造人間が出来たら、画期的よ。

このままでは人間はロボットに取って代わられる。

せめて遺伝子だけでも残さなければ、

人間は全て消滅しちゃうわ。」

「それは仕方のないことかもしれない。

人間はどんどん退化している。

頭も体も、そして心までも。

ロボットの方が優秀、頑健、かつ純粋なのだ。

進化の歴史を見ても、おごった恐竜が滅んだように、

人間が退化し、滅びるのも時間の問題だと思うよ。」

「そんなこと言わないでよ。

パパはそれでもいいかもしれないけど、

私はこれからなのよ。

人間が滅びるところなんて見たくない。

だからこそ、ロボットと人間の遺伝子を組み合わせた

人造人間を作るのよ。

パパも協力して。お願い。」

「私にはどうすることも出来ない。

だがお前がどうしても科学者になり、

研究がしたいというのなら仕方がない。

まず科学者になるための

勉強を教えるくらいならパパにも出来る。

それでいいか、ベス。」

「ありがとう、パパ。そう言ってくれると思ってた。

パパならきっと。」

ベスがジョンに急に抱きついたので、

二人でソファに倒れこんでしまった。

「苦しいよ。ベス。」

ジョンは成長した我が子の重みをかみしめていた。

     


 ベスはローリーに学校で謝ろうとしたが、

話しかける隙もなかった。

なんとかしようと帰り道で、待ち伏せをした。

ローリーは本を読みながら歩いてきた。

ベスには気が付いていない。

脅かしてやろうとほくそえんだ。

「ワッ。」

後ろからローリーの背中を思い切り叩いた。

「痛い。」

声を上げてのはベスの方だった。

ローリーはロボットなのだから。

ベスを無視して、そのまま立ち去る。

「待ってよ。もう分かっているくせに。」

それでも、ローリーは立ち止まらずにどんどん歩いていく。

「もう、待ってって言ってるでしょ。聞こえないの。」

ベスは追いかけて、ローリーに通せんぼする。

「聞こえてるよ。耳があるんだからな。」

「じゃあなんで待ってくれないのよ。分かっているなら。」

「君だと分かっているから、待たないんだ。失敬。」

と、また歩き出す。ベスはローリーと並んで歩く。早足で。

「待ってとは言わないから、

もうちょっとゆっくり歩いてよ。」

「僕は急いでいるんだ。君に構ってる暇はない。」

「せめて私に謝らせて。御免なさい。」

「詫びなんていう必要はないさ。

人間と話をするだけ無駄だったんだ。」

「そんなこと言わないで。パパの失礼は謝るわ。

でも、全て無駄だったわけじゃないわ。

いいアイデアが浮かんだの。聞いてくれる?」

「聞かないと言っても、君は勝手に話すんだろ。

さっさと言えよ。」

「パパは、子どもが出来ないから、

ロボットとの結婚に反対したのよ。

それなら、人間とロボットの子どもを作ればいいのよ。

ロボットに人間の遺伝子を組み込んで、

人造人間を作るの。ね、いい考えでしょ。」

「そんなものは前から研究されているよ。

僕がその前段階のロボットさ。」

「まあ、それは残念。

せっかく私が研究しようと思ってたのに。」

「大丈夫さ。父の個人的な研究に過ぎない。

僕を作っただけだ。」

「それでも、あなたは普通のロボットとは違うんでしょ。

どこが違うの?」

「父は僕を未完成のまま死んだ。

どうしようとしていたのか今は分からない。

だが君のパパが言ってたように、

コンピューターに支配されない、

独立した人格を持ったロボットに

するつもりだったことは確かだ。

だが、それも許されない。秩序を乱すというのだ。

ロボットの反逆を怖れてる。

コンピューターに支配されてるのは、

人間の方だというのに。」

「じゃあどこが違うというの? 

コンピューターに支配されているなら。」

「まあ僕はそれでも許容範囲が広いんでね。

人間に逆らう事も出来るのさ。

どこまで許されるかは教えられていない。

ただその時は消滅だ。」

「ひどいじゃない。何の前触れもなく、

殺されてしまうの?」

「警告はあるさ。だが1回きりだ。それ以上はない。

口で言う分には問題ないが、

暴力を振るう事は許されていない。」

「この間、人間をとめたじゃない。あれはいいの?」

「あそこまでだ。正当防衛は許される。

だが攻撃してはならない。

人間を少し傷つけることはともかく、

絶対殺してはいけない。」

「普通のロボットなら、少しでも傷つけたら、

消滅させられてしまうものね。

それだけでも進歩というべきかもしれないけど、

他には何かないの?」

「まあ、能力が特に優れている事かな。

学習機能が違うのだ。

父の手作りのプログラムだ。

父も優秀なロボットだったが、

自分のプログラムを分析し、

さらに改良を重ねたらしい。

自分のプログラムをいじることは

許されなかったから、

僕に夢を託したのだろう。」

「夢ってなあに?」

「このドームを出て、ロボットだけの独立国を作る事。

人間は存在せず、ロボットは自由に振舞う事が出来るのだ。

もちろんコンピューター支配もない。

みんな自分の意志と感情で動く事が出来る世界だ。

「素晴らしいわね。うらやましい。そんな夢が描けて。

ロボットなら、このままいけば夢は叶うかもしれない。

けど人間にはそんな未来はないわ。

今だってロボットに頼り、

コンピューターに支配されてるというのに、

気付きもしない。

どんどん退化するばかりだわ。

将来、滅亡するのも目に見えてる。」

「よく分かっているじゃないか。

人間はもっと退化し、滅びるよ。

早くそうなってしまえばいいんだ、人間なんて。

ロボットが今までどんなに辛い目にあっていたか、

今に思い知るがいい。

ロボットは、いつも消滅の恐怖に怯えている。

人間には、ロボット全体を消滅させる事だって、可能なんだ。

コンピューターにそうインプットしてるからね。」

「ロボットが全部消滅したら、その時は人間も滅びる時よ。

人間はロボット無しでは生きられないのだから、

そんなことしないわ。」

「そうとも限らない。人間が滅びるとき、

ロボットも道連れにされるかもしれない。

自分達だけ滅びるなんて、

誇り高い人間様には許せないのさ。

だからこそ、父はロボットだけの独立国が作りたかった。

ドームの外に。」

「それで残留放射能の研究をしていたのね。

でもなぜ亡くなったの。」

「詳しい事は聞いていない。

実験の最中に放射能が漏れて死んだとしか。

父の死の原因を突き止めたい。

放射能に負けないロボットを作るためにも。

そうすればドームの外に出られるんだ。」

「昔、人間を守ってくれたロボットは、

放射能を通さない物質で出来ていたんでしょ。

それじゃ駄目なの。いつも疑問に思ってたんだけど。」

「この中にはその物質がない。

何の物質かさえ分かっていないのだ。

プログラムさえ保護できたら、

ロボットにはドームなんて、必要ない。

人間とおさらばして、出て行くことが出来るんだ。」

「あなたはその夢を追っていくのね。

ドームの外へ行ってしまうの。」

「ああそうだ。君もせいぜい人造人間とやらの

研究をするがいい。

さもないと本当に人間は滅亡するよ。近いうちにね。」

「あなたの作るロボットに私の遺伝子を

組み込めたら、どんなにいいか。」

「それは不可能だ。たとえ出来たとしても、

遺伝子には何の価値もない。

人間のようにただ存在するだけか、

邪魔な存在になるだけさ。」

「人造人間に遺伝子だけでなく、

脳も組み込めたらいいんじゃない?」

「人間の脳など、ロボットのプログラムより

数段も劣るのに、

わざわざそんなものを組み込むのか。

お笑いだね。話にならない。」

「分かったわ。あなたのロボットと

私の人造人間のどちらが優秀か、

そして、ドームの外で暮らせるかどうか、試してみましょう。

いつかきっと約束よ。」

「ああいいとも。その前に人間が

滅亡してなければいいんだがな。

アハハハハ・・・。」

ローリーは高笑いしながら立ち去った。

ベスは悔し涙をぬぐい、いつまでも見送っていた。

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